楔を倒して虚へ進む澪。
耳の奥に響く、紗重と繭の声。
宮司達の霊魂が並ぶ中、虚ろの前に立ちつくす繭。
「・・・・儀式を、しよう・・・・」

 瞬間。
「っしゃーオラァ!!」
 突然ダッシュして繭をヤクザキックで蹴り倒す澪。
 危うく虚ろに落ちかける繭。なんとかふちに手が掛かるが、その手を更に
ガッ!ガッ!ガッ!ストンピングする澪。
「オラ、落ちろ、おちやがれ紗重っ!!」
「み、澪、ちが、私は繭・・・」
「おねぇちゃんのふりしてももうだまされねえぞゴルァ!」
「さんざん無抵抗のアタシをおっかけまわしやがって!この白装束ストーカー!!」
 たまらず後ろから羽交い締めにする宮司。その顔面に渾身の肘打ちをかます澪。
「贄の定めにしたが・・・ぐおっ!」
「っせー化けモン!」
 目標を宮司達に切り替えて暴れ回る澪。逃げまどう宮司達。
 隅っこでおびえている黒澤良寛。
(私の娘じゃない、絶対に私の娘じゃない・・・・)
(私の娘達はあんなじゃない・・・)

 やっとはい上がってきた紗重(繭)を見付けて雄叫びとともに駆け寄る繭。
「うるぁあああ!!」
「きやああっ!!」
 双子のカンか、襲いかかる右肘を、間一髪うずくまってかわす繭。
 反応が一瞬遅れた紗重の喉元を、澪の右肘がまともにとらえ、虚の中に
たたき落とす。
「ヴィーーーーーー!!」
 勝利の雄叫びをあげる澪。しゃがみ込んで腰が抜けた繭。四つん這いで
這って逃げる宮司達。

 唐突に静かになって振り返ると、虚の石台の上で、スカートも気にせず
高いびきで爆睡している澪。
 顔を見合わせる一同。
 黒澤良寛、忌み人に指示。忌み人、嫌々をするも、みんなに押し出され、
完全に熟睡しているのを確認後、そーっと抱え上げる。宮司が、繭の手を引いて
村の外に導いていく。
(せえのっ・・・・)
呼吸を合わせて、忌み人が、ぐったりしている澪を、神社経由で村の外に放り出す。
同じく、村の外のベンチまで導かれる繭。
 暗転・・・・

 目を覚ますと、あわい光のふりそそぐ、森の中の小さな小川のそばに横たわっていた
二人。少し先に目を覚ました繭が、ばっと跳ね起きる。
「澪・・・澪!?」
 手を繋ぐようにして倒れていた澪を見付けて、顔をくしゃくしゃにして泣き崩れる繭。
「澪・・・いっしょに・・・逃げられたんだ・・・」
 そっと、澪の首筋に唇を寄せて、鼓動を確かめるように抱き上げる。その瞬間・・・
「ゲフゥッ・・・」
「酒くさっ!!!」
 澪のポケットから、綺麗なガラスの瓶がいくつも転がり落ちた。
「御神水のビン?
 ・・・・お、御神酒っ!?」

「おねえちゃん、頭が痛いよ・・・・」
「はぁ・・・」
 二日酔いでべろんべろんの澪に肩を貸しながら、繭は酒臭さに耐え、降り注ぐ夏の日差しのした、
家路を急ぐのだった。


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